概要
Bit Trade One(株式会社ビット・トレード・ワン)さんで販売されているADBLE01Pを使用
直径5cm程度の導体球を静電容量変化で検知するための電極の作成
静電容量変化の検知デモ
今回の構成
Bit Trade Oneさんで販売されているBLE静電容量式センサ(ADBLE01P)と、手作りの静電スイッチ電極とを合わせて動作させ、APBLE001-PC for ADBLE01Pで受信してWIndows PC上のOutput Monitorで波形表示させています。
通常はiOSで動作する評価用アプリをAppStoreからダウンロードしてご使用されると思いますが、波形をPC上に表示するためカスタムでAPBLE001-PCを使用しています。
静電容量検出電極の作成
今回は、直径約5cmの球体を静電容量変化で検知する目的でA4サイズ程度の検出面積を持つという条件で検出電極を作成します。
検知したい物体のおよその静電容量の計算
物理の教科書に載っている数式を用いて、直径約5cmの水風船を理想的な導体球に近似して、ざっくりとした静電容量値を求めます。
直径約5cmなので半径rは2.5cmを使います。検出電極と導体球の間の物体は、ほぼ空気なので比誘電率は1.0とします。数式に数値を入れると、ざっくり2.8pFになります。
この2.8pFがどの程度なのかを知るため、人間の静電容量値も球体に近似して求めてみます。直径1m程度の球体と考えて数値を入れると約56pFになります。ESDの信頼性試験で用いる人体モデル(HBM)の静電容量値が100pFなのでだいたい同じような感じです。
一般的な静電容量タッチスイッチは、この人体に対して静電容量変化を検知しやすいようにルールを決めて設計してあるため、直径5cmの球体はだいぶ小さい容量値だということ知っておいた上で設計する必要があります。
作成した検出電極
ADBLE01Pは、自己容量タイプなので検出電極とGNDの間の静電容量を測定します。自己容量については、そのうち別途説明します。
検出電極とGNDの間に、検出したい導体が存在すると静電容量が変化するわけなので、その変化は検出したい約5cmの球体の静電容量値よりもずっと小さい値になります。検出したい約A4サイズを全部1つの電極にしてしまうと、もともと持っている静電容量(ノミナル容量)が大きくなりすぎて小さな静電容量変化を検知しにくくなります。
このため、今回はGND電極のほかに3つの検出電極を用意してアルミホイルで静電容量検出電極を構成しました。電極はくし歯状に構成されています。
静電容量変化の測定系
検出電極とADBLE01Pとの間の接続はワニ口クリップのケーブルで簡易的に接続しています。実験なのでこのような簡単な接続にしてますが、物理的に位置が動いてしまうと静電容量も変動してしまうため気をつける必要があります。その他、検出電極と検出したい導体の間の静電容量以外の原因での静電容量変化にも気を付ける必要があります。経験がある方ならいろいろ気が付くと思いますが、そうでない場合でも簡単な実験を行うことで想定外の不具合を早めにつぶすことができます。
検出電極の上に、細断された紙を入れた書類ケースを置き、その上に置いた水風船が静電容量に与える影響を測定してます。検出電極に直接水風船を置く方が静電容量の変化は圧倒的に大きいです。検出電極と水風船の間に細断された紙や書類ケースがあることで5mm~10mm程度距離があるため、その分感度は下がりますが、それでも感度があることがわかります。
水風船を上に置くことで、検出電極の静電容量が変化して、グラフが変化することがわかります。
水風船を紐でぶら下げて置く位置を制御しています。手で水風船を持って置いてしまうと、水風船の静電容量約2.8pFに対して人間の静電容量約56pFの方が大きいため、水風船よりも人間の影響で静電容量が大きく変化してしまうため、その影響を取り除くために紐を用いています。
別の測定系
同様の仕組みで、図のような不透明なパイプ内の水風船の位置を、外側に巻いた検出電極間の静電容量の変化で知ることもできます。