概要

静電容量センサは、指を検知して入力デバイスとして使用するだけでなく様々な物理量を計測できます。静電容量変化の仕組みを理解することで、どういた要素が静電容量変化に影響を与えるのか知り、それらを積極的に利用することができます。

静電容量センサの仕組み

静電容量センサのざっくりした動作を図に示します。この図では自己容量式のセンサになっていますが、相互容量式でも、検出電極・GND電極のペアが、駆動(Tx)電極・測定(Rx)電極のペアになる程度で大きな差は無いです。

自己容量式の静電容量センサの仕組み

静電容量測定回路は、接続された検知電極とGND電極間の静電容量を測定します。検知電極とGND電極間の電気力線に検出対象物が近づくことで電気力線の形状が変化します。検出対象物が近づくと静電容量の測定値は大きくなり、離れると測定値は小さくなります。

静電容量を精度良く計算しようとしたら、有限要素法を使って方程式を解いたりする必要がありますが、ざっくり理解するためにはざっくりしたモデルで十分です。

平行平板モデルを使用した静電容量の理解

静電容量センサから平行平板コンデンサへの変形

静電容量が変化する要因にどういったものがあるのか理解するために、簡単な数式を使用したいので、電極の位置関係を変形して平行平板コンデンサにしてみます。

平行平板コンデンサのモデル

平行平板コンデンサの静電容量Cは、平板電極の面積Sと、電極間距離dと、電極間の物質の誘電率εを使って近似できます。定性的な理解であれば、この式でかなりなことは理解できます。

静電容量の変化に直接影響を与えるパラメータ

平行平板コンデンサの式から、電極(=導体)の大きさや距離といったパラメータで静電容量が変化するということがわかります。検出したい物体(=導体)が近づいてきたり離れて行ったりすることも位置関係が変化することなので、静電容量の変化として検出できます。

また、自己容量式の静電容量測定方式の場合、明示的に用意されているGND電極以外にも、GNDと同電位の電極は存在しています。給電の仕方によってはGND電極が大きく静電容量変化に影響を与えやすい場合があります。これに関しては、別途解説したいと思っています。

同様に、電極間の物質の誘電率でも静電容量が変化することがわかります。誘電率は、真空の誘電率をε0として、その何倍かを表す比誘電率との積で表します。空気の比誘電率はだいたい1です。比誘電率が1に近いものを検出しようとしても静電容量の変化は少ないです。液体を静電容量変化を利用して検知したい場合、油のような分極しない無極性のものは比誘電率が低いため、あまり適さないです。

静電容量の変化に間接的に影響を与えるパラメータ

電極は、リジッド基板上に構成されたり、フィルム状の電極を筐体に貼り付けたりしますが、例えば電極を支えている物体が、温度の変化で伸びたり縮んだりすると電極間の位置関係が変化するので、静電容量値も変化します。誘電率は、もっと温度変化の影響を受ける可能性があります。

特に誘電率は、物質の特性により様々なパラメータの影響を受けます。プリント基板のレジストは湿度の影響を受けて誘電率が変化します。圧力等で誘電率が変化する物質もあり、その性質を積極的に利用して静電容量の変化として測定することもできますし、逆に本来測定したい物が測定できなくなってしまうため、それらの影響を抑えたい場合もあります。