概要

ADBLE01Pの標準iOSアプリ(BLE Smart Sensor)の中にある補正(自動補正・強制補正)の項目を理解するために必要な説明を行います。

BLESensorアプリ補正画面

静電容量測定の絶対値測定と相対値測定の違いや、静電容量値の変動の要因、静電容量の自動補正の使われ方が含まれます。

静電容量値の絶対値測定と相対値測定に関して

静電容量の測定値には、使用用途に応じて、大きく絶対値測定と相対値測定との2つに分類できます。静電容量の値は、おおざっぱに言うと2つの導体間の位置関係や、導体の形状や、それら導体間の物質の誘電率や導電率によって決まります。

静電容量の測定値を計測器のように使用したい場合には、たいてい絶対値測定になります。測定された値は、そのまま静電容量値[F(ファラッド)]に変換できます。測定される静電容量値は、主に測定対象物によって変化し、それ以外の要因での変化は無視できるか、理論的に補正できるため、一定の精度内に収まります。比較的古くから使われている用途では、タンク内の石油等の容量を精度良く測定するための静電容量式レベルセンサがあります。

静電容量の測定値をタッチスイッチのように入力デバイスとして使用したい場合には、相対値測定になります。現在、世の中にあるほとんどの静電容量測定ICは、タッチパネル・タッチスイッチといった入力デバイス用途で使用されています。タッチパネルやタッチスイッチの検出電極は、主に指が触れることでの静電容量の変化を検出することを目的としています。しかし、その検出電極は計測機器用途のように精度良く作っているわけではないため、使用場所の温度や湿度変化や、使用中に応力が加わったり、設置場所が変化したりといった要因で、指が触れていなくても静電容量値が増加したり減少したりと変化しています。その変化に対して、何も処理を行わないと室内から室外に移動して周囲の環境が変化すると勝手にタッチしてしまったことになったり、逆にいくらタッチしてもオンしないといったことが発生します。この現象を防ぐため、タッチしていない静電容量の値を基準(この基準の静電容量値をゼロ点と呼びます)に、どれだけ変化したかという相対値を使用しています。

静電容量の補正に関して

静電容量の自動補正に関して

前述のように、タッチしていない時の静電容量値(ここではノミナル容量と呼びます。)は、周囲の環境に応じて変動します。ただ、周囲環境によるノミナル容量値の変動は、指でタッチする時の静電容量値の変化と比べるとゆっくりであるため、タッチ判定のために内部で持っているゼロ点の値を、現在の測定値にゆっくり近づけるような計算を行っています。これを自動補正といいます。このため、長時間タッチしたままの状態を維持していると、タッチしていないように判定されることがあります。

自動補正を止めると、だんだん静電容量測定値が減少していく現象はなくなりますが、ノミナル容量の変動には対応できなくなるので、トレードオフになります。タッチスイッチ等の用途以外で使用される場合には、補正アルゴリズムを実装することで快適にご使用になれる場合があります。

静電容量の強制補正に関して

ノミナル容量のゆっくりした変動に応じて、ゼロ点の値をゆっくり変動させるのが自動補正ですが、なんらかの原因でノミナル容量が大きく変動してしまった場合に、一気にゼロ点を補正する処理が強制補正です。

センサ電極の位置を動かしてしまったり、電源オン直後でゼロ点補正がうまく行われていなかったりする時に、強制補正が役に立つ場合があります。