概要
アップサイドの計量システムを使って、点滴中に点滴バックの重量を、サーバーに送ってグラフ表示してみました。
離れた場所からでもPCやスマートフォンでリアルタイムの重量や、その変化状況をグラフで確認できます。
お客様のご要望:点滴バッグの残量を知りたい
病院などで点滴を行う場合、点滴の滴下スピードは、クレンメと呼ばれる機構を使い調整します。例えば10秒程度の間に、滴り落ちる液の滴数が数えて、それが指定スピードになるように調整します。その後、点滴スピードが適正か、残りはどれくらいかを目視で確認するため、看護師さんが数十分ごとに、点滴が終了するまで、何回も見回りに来る方法が一般的です。
お客様のご要望は、
1.病室に行かなくても、点滴バックの残量を知りたい。(見回り回数を減らしたい。)
2.滴下スピードを正確に見たい。(滴下回数以外の方法で知りたい)
3.点滴の残り時間の推測を、今よりも正確に行いたい。(現状は目視による推定)
4.記録に残したい。
などでした。
アップサイドからの提案は、
・点滴中に、点滴バッグ+チューブ+クレンメなどの重量を、一定時間間隔で測定。
・データをサーバーに送信。
・サーバ上のデータを、ウエブ・ブラウザでグラフ表示する。
というシステムです。
ブラウザを使うので、PCやスマートフォン、iPadから、簡単にデータを見ることが出来ます。
ナースステーションに設置したPCから、看護師さんが持つスマートフォンから、簡単にデータ確認ができます。
点滴バッグ重量測定システム
作成した機器です。点滴バッグの重量を測定して、無線でサーバーにデータを送ります。
点滴バッグ重力測定システム
APBLE002-InfusionS
システムの構成図です。
点滴バッグの重量を測定し、BLEで送信、受送信機でWi-Fiなどに変換して、データをサーバーに送ります。そのデータをグラフ化して、スマートフォン、PCなどで見られるようにしました。
重量測定結果
測定結果
グラフ表示しました。
Google スプレッドシートで表示していますので、関係者でグラフ結果をシェアできます。
1000mlの、生理食塩水を7時間ほどかけて滴下しました。
最初と、16:35頃に、データが乱れているのは、その時に点滴バッグに、触っていたことが原因です。点滴バッグ、管、などの重量は70.5gほどあり、最後にその分の重量が残っています。
このデータを使うと、
いちいち病室に行かなくても、点滴の状況を見ることが出来ます。
点滴のスピードを、適正に管理・調整することが出来ます。
点滴途中で、おかしな状況になっていないかを、チェックできます。
点滴状況を、記録しておく事が出来ます。
ナースステーションに置いてある、タブレットやPCなどで、点滴中の、複数点滴バッグの重量グラフが、一斉に見えるようになれば、看護師の方々の省力化の助けになると、ご評価いただきました。
また、点滴バッグのメーカーの人は、こんなに正確に、点滴速度の表示が行えるのかと、びっくりされました。
点滴バック重量測定システムのメリット
システムを作成してみて分かった、一番最初言われた、最大のメリットは、
「見回り、確認の手間が圧倒的に少なくなる」
でした。
看護師さん、お忙しいことが、良く分かります。
その上で、見える化によって、複数の人の目で、状況が確認でき、記録にも残せる事は、好評でした。
滴下速度計算ツール
実際に輸液の滴下速度を調整するためのツールを用意しました。輸液セットを選択し、投与輸液量と投与時間を設定し、計算ボタンを押すと10秒あたり何滴もしくは1滴あたりの時間を表示してくれます。それに合わせてクランメを動かして滴下速度を調整します。
滴下速度計算
点滴終了予定時刻の推定や異常を検知しての通知
今回のシステムでは未だ実現できていませんが、
充分なデータを取得することで点滴スピードから終了予定時刻を予想、
点滴のスピードが想定範囲よりも早かったり遅かったりすることを検知、
点滴の停止や、速度の急変など、異常が発生した場合の通知、
それらをスマートフォンに通知したりすることで、
より有用なシステムにできると考えています。
加えて
点滴の種類を、バーコードなどで読み取り、データベースに送る、
RS-232Cインタフェースを持つバイタル監視機器とAPBLE-001を使い、バイタル・データを監視・記録、
点滴時の室温・湿度の記録、
このように、その他の測定を組み合わせることで、さらにメリットをご提供できます。
点滴バッグ重量測定システムの応用
今回のシステムは、点滴バックの重量測定だけでなく、リアルタイムに変化する重量を監視したい用途に応用可能です。洗濯物の重量を監視して、乾燥度合いを知るための実験を以下で行っています。
その他に、ガス・薬品・香料・お酒や調味料等の在庫をリモートで監視したり、植物の果実の重量を監視したり、ペットの体調管理のために重量を記録したり、等の応用が考えられます。アイディアのみのものもありますが、これらのうちの幾つかは、弊社での実験結果もありますので、今後ご紹介する予定です。
その他、試作品開発に関して雑記(重量測定と、必要なエンジニアリング)
最初、お客様からの問い合わせは、点滴バックの残量を知りたいので、アップサイドのWeb情報にある、液体の量(レベル)測定システムを使いたい、という事でした。
いろいろなご要望や、お困りの点などをお聞きした上、設置の容易さ、コストなどを検討し、今回はレベル測定ではなく、重量測定ををご提案いたしました。
一般的に、重量測定システムの構築は、専門の知識を必要とするため、カスタム設計を行える会社は少ないと言われています。しかし、アップサイドには、過去に測定機器メーカで、計量機器の設計を行った経験があり、国家資格である「一般計量士」の試験に合格したエンジニアがいるので、重量測定システムの設計・開発が行えます。
今回のシステムで必要な技術は
1.重量センサーを使っての計量。
2.Bluetooth、Wi-Fiなどの無線通信。
3.省電力設計。
4.サーバ、データベース、ウエブ・ブラウザーの構築。
5.構造設計、ケース設計。
などになります。
アップサイドでは、上記の技術を持ったエンジニアが、皆様のご相談をお待ちしております。