非接触スイッチに関して

非接触スイッチとはどういうものかに関して、決めておきたいと思います。弊社で考える非接触スイッチとは、検出部位に触れることなく、オンまたはオフさせることができるデバイスとしています。近接スイッチ(Proximity switch)も、ほぼ同様な意味で使用できると思います。

非接触センサと非接触スイッチ

非接触センサというと、対象物との間の距離を測定したり、対象物の温度を測定したりするものです。連続的に変化する数値として測定値が得られます。非接触スイッチというと、連続的に変化する数値を、あらかじめ決めたしきい値を境にオンまたはオフに分類するものを指します。

非接触センサに関しては、別の記事としてまとめたいと思います。

非接触センサ・スイッチと近接センサ・近接スイッチ

非接触センサのうち、主に対象物との距離に注目して、近接している(オン)か近接していない(オフ)かを出力するものを近接スイッチと言います。対象物との距離を連続的に変化する値として取得したい場合には距離センサと言うため、近接センサという単語も近接スイッチとほぼ同じ意味で使用する場合が多いように思います。

非接触スイッチの原理と種類

非接触スイッチには、さまざまな種類とその動作原理があり、全てを取り上げることはできません。ここでは、3つの種類の非接触スイッチを取り上げて説明します。

3種類の近接スイッチ

3種類のうちの1つは、検出物(人体)からのエネルギーを受け取って検知するタイプの焦電センサを使用したもの、もう1つはエネルギーを出力し、反射してくるものを受け取って検知するタイプの光学式測距センサを使用したもの、最後の1つは電気力線の変化(=静電容量の変化)を検知するタイプの静電容量式センサを利用するものです。

焦電スイッチ

焦電センサは、人感センサとかPIR(Passive Infrared Ray)センサとか言われることもあります。赤外線が当たることで温度が変化して分極が発生する焦電効果を利用したデバイスです。焦電センサの出力をオン・オフスイッチとして使用するものを焦電スイッチとします。検知対象物から何らかの物理量を受け取ってセンシングするという意味では、例えばイメージセンサも同じカテゴリに分類できます。

焦電センサイメージ

焦電スイッチの特徴

例えば人間は周囲温度より高い体温を持っています。このため、体温に応じたエネルギーの赤外線をしていて、その赤外線が焦電センサに当たることで分極を発生させます。もし、周囲の温度が体温と同じぐらい高くなってしまうと検知したい人間から赤外線の成分(Signal)と、周囲温度の赤外線の成分(Noise)とを比べた時に差が小さくなってしまう(S/N比が低い)ため、検知感度が悪くなります。昆虫や爬虫類のように体温を持たないものを検知する目的でも使用できません。

また、変化を検知する、ハイパスフィルターのような特性になっています。周囲よりも温度が高くても動かないでじっとしていると検知されません。

フレネルレンズという白色のドーム状の特徴的な形状の部品を使用して、周囲から飛んでくる赤外線を焦電センサの検出部分に集めます。外形デザインに制約があることを了承しておく必要があります。

微小なエネルギーを増幅しないといけないため、高利得なアンプを使用します。アンプが発振しないように帯域を狭めて使用しますので、応答は非常にゆっくりになります。アンプを安定して使用するための利得(G)と帯域(B)の関係は、電子回路の教科書に説明があると思いますので、興味があれば調べていただければと思います。

コイン電池で数か月動作させることができるくらい低消費電力なものをあります。

赤外線(電磁波)を検知するため、反応させたい距離に比べて、センサ(スイッチ)の大きさは小さいです。

光学式の測距スイッチ

光学式の測距センサは、光を出力し、光が戻ってくるまでの時間を測定することで距離を求める方式です。波長・周波数の異なる電磁波を使用する場合もありますし、電磁波の代わりに超音波を使用するものも同じカテゴリに分類できます。測距センサの測定値をオン・オフスイッチとして使用するものを測距スイッチとします。トポロジが大きく異なりますが、出力装置と受光装置を分離することで光を受信できるかできないかをオン・オフ判断に利用する通過スイッチも類似のカテゴリに分類できます。

光学式測距センサイメージ

光学式測距スイッチの特徴

自ら測定対象となる信号を出力するため、特性は安定しています。光学式の場合、周囲の光の影響が気になりますが、変調をかけた光を出力することでその影響を取り除いています。

応答速度を早くしようとすると、測定頻度を増やす必要があるため、消費電力は増加します。測定ごとに発光させる必要もありため、コイン電池だとあまり長持ちしないです。

発光・受光部分に、使用する光の周波数に対して不透明な部分がないように、外形デザインに気をつかう必要があります。

光(電磁波)を検知するため、反応させたい距離に比べて、センサ(スイッチ)の大きさは小さいです。

静電容量スイッチ

静電容量センサは、被測定電極を用意してあげて、その電極が持つ静電容量を測定します。例えば、人体(指など)は、測定回路から見ると導体であるため、近づいたり触れたりすると、被測定電極の静電容量値が増加する方向に変化します。測定された静電容量値がしきい値より大きいか、小さいかを判定してオン・オフスイッチとして使用するものを静電容量スイッチとします。明確な物理的な差はありませんが、被測定電極に近づくぐらいでオンするものを近接スイッチ、被測定電極に触れるぐらいでオンするものをタッチスイッチとします。電気力線(静電界)に対して、静磁界を利用する方法もあります。

静電容量式センサイメージ

静電容量スイッチの特徴

電極の大きさを大きくすればするほど、検知距離は増えます。静電界の電界強度は、点電荷モデルの場合は距離の2乗に反比例、並行平板モデルの場合は距離に反比例するので、電極サイズを超えるような検知距離を求めるのは原理的に難しいです。このため(光を含む)電磁波を使用するタイプの近接センサ・スイッチと比べると、同等のサイズ感であれば全く検知距離は短いものになります。

応答速度は、入力デバイスとして使用されることからS/Nが高ければミリ秒程度での動作が可能です。ただし、検知距離を長くしたい場合はS/Nが下がるため応答時間も下がります。

コイン電池で1年動作させることができるぐらい消費電力を下げることもできます。

物理的に可動する部分が無いため、機械的なスイッチと比べて耐久度は高いです。代わりに製品に組み込む場合には電波を照射したり、電源ケーブル等の配線を伝導して入ってきたりするノイズでの誤動作に対応する必要がある場合があります。

機械的なスイッチと比べて、見た目のデザインの自由度は高くなります。ノイズ耐性や感度といった電気的な特性を含めて設計が必要な場合もあり、機構デザインを先行させてしまうと、開発の最終段階に近い信頼性テストで問題が発覚する場合もあります。